高速で覆面パトに止められて
長崎に出張中の夜中二時、エアコンの冷気に肩をすくめながら目が覚めた。
酒を一杯やって、そのまま眠ってしまったらしい。
ふと今日の出来事を思い返すと、思わずため息が出た。
昼間、がら空きの高速道路を走っていると、後ろに妙な車がついた。
追い越させようとしても離れない。
「なんだこいつ」と思いながらアクセルを踏んだ瞬間、赤い光が点滅した。
覆面パトだった。
36キロオーバーで、反則金は3万5千円。
一般道なら免停だが、高速なので青切符で済むという。
問題はここからだ。
私はこういうとき、すぐには払わない。督促通知が来ても無視する。
何度か督促が届き、やがて警察本部から呼び出しが来る。
そこが勝負どころだ。呼び出しを無視すると逮捕される。
10年前のことだが、呼び出しを待って、私は担当の警察官に言った。
「裁判を受けたいんですが。何が悪いのか、裁判官に教えてもらいたい」
警察官は面倒くさそうに眉をひそめた。
速度違反で正式裁判となると、書類も証拠も準備が必要で、手間がかかる。
向こうとしては、できれば避けたい流れだ。
しばらく沈黙が続いたあと、警察官はぼそっと言った。
「……執行猶予で処理します。罰金は結構です」
あっけにとられた。
交通違反で執行猶予を勝ち取る人間がどれほどいるだろう。
あれは今でも酒の席で話すと必ずウケる。
今回の反則金も、また同じ道をたどるのだろう。
女房には言えないが、私はこの“勝負”が嫌いではない。
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