水巻町テニス同好会

遠賀郡水巻町でテニスを楽しんでいる同好会活動などを広報します。

集合の五分前遅いと言ふ

頃末南

年を重ねると朝が早くなる――よく聞く話だが、どうやらそれだけでは説明がつかない現象がある。

たとえば、アルバイトの警備員仲間たちが、約束の時間より三十分以上前に集合してしまう、あの光景だ。


彼らにとって「早く来る」は美徳であり、仕事の一部であり、仲間への礼儀でもあるらしい。

早く来ても仕事もないしコーヒーを飲んだりタバコを吸うだけである。

しかし、私にとっては少し勝手が違う。

長年エンジニアとして働き、営業技術として客先を回ってきた身からすると、“早く行きすぎる”ことはむしろリスクだった。


かつて、訪問先に早く着きすぎてしまい、産業スパイと疑われたことがある。

「予定より早く来る技術者」ほど怪しい存在はないらしい。

それ以来、私は早く着いてもどこかで時間をつぶし、“5分前”を守るようになった。

技術屋にとって、時間は正確であればいい。早すぎても遅すぎても、どこか落ち着かない。


ところが、警備の現場では事情が違う。

彼らは早く来ることで不安を消し、仲間に迷惑をかけないようにし、

「何かあっても大丈夫」という安心感を共有している。

その文化の中では、私の“5分前”はどうやら“遅刻寸前”に見えるらしい。


「もっと早く来い」と同僚に言われても、私は苦笑いするしかない。

早く来ると疑われ、遅く来ると責められる。

どうやら私は、どちらの世界でも“ちょうどいい時間”にたどり着くのが難しいらしい。


それでも、私はやっぱり5分前に行く。

長年の習慣は、そう簡単には変わらない。

そして、そんな自分のリズムを、少し誇らしくも思っている。


早く来る人も、来ない人も、それぞれの人生の時計で動いている。  

その違いが、なんだか人間らしくて面白い。