薬の効き目とJR改札の軽やかな音
肝臓と腎臓の機能低下を告げられたとき、私は正直に言えば少し身構えた。
年齢を重ねるにつれ、体のどこかが静かに悲鳴を上げることは覚悟していたつもりであったが、いざ医師から数値の説明を受けると、やはり胸の奥に重い石が沈むような感覚があった。
しかし、主治医から処方された マーズレンS配合薬 と ウルソデオキシコール酸 を飲み始めて数日が経つと、体の内側で何かが静かに整っていく気配を感じた。
薬というものは、目に見えぬ場所で働き、気づけば「昨日より楽である」と思わせてくれる。
その変化は誰かに指摘されて気づくものではなく、体が自ら教えてくれる種類のものである。
今日、私は明日のプレゼン資料を集中して作成した。
キーボードを打つ指が軽く、頭の回転も滑らかであった。
体調が整うと心も整うというのは本当である。
薬の効果なのか、気持ちの張りなのか、その両方なのかは分からぬが、久しぶりに「仕事がはかどる」という感覚を味わった。
明日は博多へ向かう。
この三十数年、千回以上も車で往復してきた道のりを、今回はJRで行くことになった。
高齢者講習で運転を控えるよう言われたからではない。
単に車が一台しかなく、月末の銀行やパートで女房が使うからである。
だが、電車で行くことはむしろ歓迎すべき変化である。
「クレカでJR改札を通れるらしい」
そんな小さな新しさが、明日の移動に新鮮な風を吹き込む。
車では見えなかった景色を窓越しに眺めるかもしれない。
車では得られなかった静けさを座席で味わうかもしれない。
そして、プレゼン前の緊張を、電車の揺れがそっとほぐしてくれるだろう。
薬で体が軽くなり、資料がすらすら進み、電車で博多へ向かう新鮮さが心を満たす。
明日はきっと、改札を通る「ピッ」という軽やかな音が、私の背中をそっと押してくれるはずである。
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